ー部分はそうはなりません。所定の負荷未満であれば、フレームは損傷を受けても
カーボンフォークは何の影響も受けませんが、限度を超えた負荷がかかると、カー
ボンフォークも完全に破損します。
金属疲労の基礎知識
常識から言って、使用されるものにはすべて寿命があります。使う頻度が多い
ほど、酷使するほど、また使い方が悪いほど、その寿命は短くなります。
疲労とは、繰り返し負荷がかかることによって、ある部分に蓄積するダメージを
言い表す言葉です。ある部分に疲労を引き起こすまでには、かなりの負荷がかかっ
ているはずです。よく挙げられる分かりやすい例がペーパークリップです。クリッ
プを前後に曲げ、繰り返し負荷をかけていると、そのうち折れます。この単純な例
から分かるように、疲労は時間や年齢とは無関係です。ガレージにしまったままの
バイクは疲労しません。疲労は、あくまでも使用によって引き起こされるのです。
では、ここで言う「ダメージ」とはどのようなものでしょうか。高い応力のか
かる部分には、まず顕微鏡でしか見えない亀裂ができます。負荷が繰り返しかかる
と、亀裂が大きくなっていきます。ある時点で、亀裂は肉眼で見えるほどになりま
す。やがて亀裂がかなり大きくなると、その部分はひどく弱くなり、亀裂がなけれ
ば耐えられるはずの負荷にも耐えられなくなります。そこまで達すると、あるとき
突然、完全に折れてしまいます。
疲労寿命が無限に近いほど頑丈なものを設計することは可能です。しかしそれ
には大量の材料を必要とするため、重くなります。軽量で強くなければならない構
造物は何であれ、疲労寿命に限りがあります。航空機、レースカー、モーターサイ
クルはどれも、疲労寿命の限られた部品を使っています。疲労寿命が無限のバイク
を作ろうとすると、現在市場に出回っているものよりもはるかに重くなります。し
たがって、軽量で性能のすぐれたバイクを望むならば、その代償として点検が必要
になるのです。
注意すべき点
•
いったん亀裂ができると、どんどん大きく
なっていきます。亀裂は破損につながる通
路を作るようなもので、どんな亀裂も危
険性をはらんでいます。その危険性は大
きくなりこそすれ、なくなることはあり
ません。
•
腐食はダメージを加速させます。腐食しやすい
環境では亀裂の成長が早まります。腐食しやす
い状態では、亀裂の部分はいっそう弱まり、拡
大します。
•
亀裂の周辺は染みができたり、変色したりしま
す。このような染みがあったら、亀裂ができて
いるかもしれません。
•
目に付くようなかき傷、えぐれ、へこみ、引っ
かき線は、亀裂のきっかけになります。ストレ
スは切断面に集中します。専門用語では「応力
集中部」といい、このような部分ではストレス
が増大します。ガラスに傷が入ると、その線に
そって割れるのと同じです。
簡単なルール1:亀裂を見
つけたら、その部品を取り替
えましょう。
簡単なルール2:バイクを
きれいにし、注油します。塩
分から保護し、塩分がついた
らできるだけ早く取り除きま
しょう。
簡単なルール3:染みが
できたらよく点検し、亀裂が
できていないか確かめまし
ょう。
簡単なルール4:どの面に
も、かき傷や刻み、引っかき
線をつけないでください。そ
のような傷がついてしまった
ら、常に注意を払うか、部品
を交換しましょう。
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